京都大学ELCAS(エルキャス)

実施レポート

[基盤コース後期]化学

2017年2月4日

  • 実施場所

    吉田キャンパス 理学研究科6号館北棟7階セミナー室

  • 当日の講師

    加納 太一 准教授(有機合成化学研究室)

  • チューター

    櫻井 舜也

  • 実習の内容

    成果発表会に向けた準備

今回の活動を通して学んだこと(抜粋)

  • 今まで行った実験の中から成果発表会で発表するテーマを決め、プレゼンの準備をした。自分の班では「高温超伝導体の物性」を選び、深めることにした。配布資料を見返したり、疑問に思うことを改めて質問しに行ったりしてまとめていった。液体窒素でも超伝導体にすることができるYBCOは、普通と比べると高温で超伝導体になるため、高温超電導体と呼ばれており、また実験でも使いやすい物質であると分かった。さらにこの物質は酸素の量によって性質が変わるので面白い物質であったと感じた。他の人の興味を引き付けられるパワポを完成させて、次回発表に望めるようにしたい。合宿が楽しみである。
  • 主に発表する内容決めとその内容理解、スライド作りを行った。私たちのグループは協議の結果、これまでで内容が最も難しかったが実験が多く、様々な器具や薬品、装置を使った「金属触媒を用いて炭素をつなごう」をテーマに発表を行うことにした。まずは研究室を再び訪れスライド用の写真を撮り、また先生やチューターの方々に疑問点を質問することで解消した。その後、活動内容を他の分野の方にも理解しやすくなるようにグループの皆で協力しながらスライドを作製した。完成はしなかったものの、発表までには間に合いそうだ。

2017年1月21日

  • 実施場所

    吉田キャンパス 理学研究科6号館275号室

  • 当日の講師

    道岡 千城 助教(金相学研究室)

  • チューター

    稲盛 樹、金川 響、村川 譲一

  • 実習の内容

    ①超伝導に関する講義、②レール型ネオジム磁石および環状サマリウムコバルト磁石を用いた高温超伝導体YBCO試料におけるマイスナー効果の確認実験、③超伝導体YBCOと強磁性体LaCo2P2の磁石に対する挙動の違いの確認実験、④組成を振ることによって作成した超伝導体および半導体計2種のYBCO試料の室温から窒素温度(77K)までの電気抵抗測定

  • 化学_実習風景超伝導に関する講義
  • 化学_実習風景マイスナー効果を確認する
  • 化学_実習風景電気抵抗値を見て超伝導転移の様子を観察する

今回の活動を通して学んだこと(抜粋)

  • 今日使ったYBCO(YBa2Cu3O7)は液体窒素ほどの温度のもので冷やすことで超伝導体となるということが分かった。また、これの特徴として電気抵抗が0になったり、磁場中にあったら磁束をはねのけるマイスナー効果があったりと素晴らしい性質を持っていると分かった。特に電気抵抗が0になるという点が興味深く、電気を流した時にロスをなくすことができると思うので、発電など様々なところに使えそうと思った。また、実際に磁気浮上実験を見たが、きれいに浮いて感動した。さらにその後、四端子法による電気抵抗測定を行ったが、二端子ではなく四端子で行うことが大切であり、温度を下げていくと半導体は抵抗が∞に発散する一方、超伝導体は抵抗が0になることが分かった。
  • 超伝導は電気抵抗が突然ゼロになってしまうことで知られていると思うが、実際には、それによって引き起こされているマイスナー効果も存在しなくては超伝導とはいえない。超伝導は、Hgでの発見(Heの液化成功に伴って)から始まり、量子力学のBCS理論が考えられた。しかし、その理論によらない、YBCO (YBa2Cu3O6+x) が超伝導体として発見された。これは、90K (-183℃) で超伝導になるので、液体窒素(沸点:77K (-196℃))で冷やすと超伝導になり、磁石と反発しあうことを、実験によって確認できた。また、常温で温まると、超伝導体ではなくなり、その反応はなくなってしまう。これは、BEC(ボーズ・アインシュタイン凝縮)などで説明される。また、BCS理論では、原子核によって作られる格子が電子により歪み、電子が通り過ぎた後も、元に戻りにくいので、他の電子をひきつけるというものだ。電気抵抗が0になるものが存在するのは驚きだが、それを説明する理論があるのもすごいと思う。

2017年1月7日

  • 実施場所

    吉田キャンパス 理学研究科6号館355、380号室

  • 当日の講師

    堀尾 琢哉 助教(物理化学研究室)

  • チューター

    原 彩乃、東村 智佳、福岡 加奈江

  • 実習の内容

    7名を4 + 3名の2グループに分けて実習を行った。
    1.光速度の測定
     研究室所有のフェムト秒レーザーならびにオシロスコープを利用することで、実際に光速度の測定を行った。
    2.光の吸収
     同じく研究室所有の可視・紫外分光光度計を用いて、有機化合物および無機錯体の吸収スペクトルを測定し、ランベルト-ベールの法則について学習させた。

  • 化学_実習風景光速度測定
  • 化学_実習風景光速度測定
  • 化学_実習風景光吸収スペクトル測定

今回の活動を通して学んだこと(抜粋)

  • レーザー光は指向性が強く、光の速さの測定に優れていることが分かった。また、現代では技術が発展していて、レーザー光を当てることでごく微小な間の化学反応の進行具合を見ることができるということを聞いて、大変興味深いと思った。そして、レーザー光を用いて吸光度を計測する機械を使った実験を行うことができ、実際に鉄の錯体はどのような光を吸収しているのかをみることができた。そこで、コロイドの粒の変化を見ることができるのか疑問に思った。
  • 今回はやや物理学寄りの内容だった。まず最初に、水溶液の吸収スペクトルの測定方法についての講義があった。これまでにクロロフィルなどの吸収スペクトルのグラフは見たことがあったが、それがどのような原理で測定されているのかは知らなかったため、とても勉強になった。特にランベルト・ベールの法則とその求め方を、学校で学んだ指数・対数や微分の内容だけで理解できて、学習が役立っていると感じた。吸収スペクトルの測定器も実際に使用した。装置一つだけで一千万円以上もするとのことで驚いた。また、メインとなる光の速度の測定実験では、フェムト秒やピコ秒といったとても短い時間を扱った。実験装置の構成自体は単純だったが、そこまで短い時間を測定できるというのが驚きだった。計算結果は秒速約30万キロメートルとなり、文献値になかなか近くなったので良かった。この実験室では光の進む経路の長さの差で、電気的には不可能なごくわずかな時間差をつくり出し、それを用いて気体や液体の反応を観察しているとのことで、実際にその装置も見せていただいた。レーザーから観察装置までの長さはおそらく10メートルはあり、高校ではありえない規模で圧巻だった。最後には手持ちサイズのスペクトル測定器を見せていただいた。私の学校にはスペクトル測定器がないようで、前に植物の育成実験で光の強度と波長が測れず失敗した経験があるため、理科部の部費での購入を先生に打診してみようかと思う。さまざまな実用的な知識も学ぶことができてとても有意義な体験だった。

2016年12月17日

  • 実施場所

    吉田キャンパス 総合研究5号館 4階402室

  • 当日の講師

    矢持 秀起 教授(分子性材料研究室)、中野 義明 助教(分子性材料研究室)

  • チューター

    村上 賢太朗

  • 実習の内容

    実習で使用する試薬(TCNQ)の昇華精製の演示実験を見学させた。昇華には時間がかかるので、これを待つ間に分子性導体(電気を流す有機物)に関して講義形式で説明を行った。 高等学校で学習する原子の構造、イオン結合、共有結合の範囲を復習後、分子軌道法を直感的に理解するための説明を行った。分子軌道を使って芳香族性の考え方、ならびに芳香族性を利用した電子供与体・受容体の分子設計を説明した。 電荷移動錯体の考え方と分子間での電子移動に関する説明を行い、電気を流す有機物についての分子軌道法的な理解の仕方を説明した。さらに、有機超伝導体などについて若干の説明を行った。 この説明の後、実習課題として2種類の電荷移動錯錯体の作製を行わせた。先ず、導電性の乏しい、(TTF)(クロラニル)錯体を作製・単離した。この錯体は温度変化に対して成分間での電荷分配量(電荷移動度)が変化する相転移を起こし、その際、明瞭な色変化が起きる。このことを、自らが作製した錯体試料を用いて体感させた。すなわち、ガラス板に挟んだし試料を液体窒素に浸すことにより緑色から茶褐色に変色する様子を観察させた。 この後、上記の演示実験で精製したTCNQ(赤色)と精製前の試薬(黄土色)の色の違い、ならびに精製試料を粉砕した時の色の変化(橙色となる)を観察させたのち、(TTF)(TCNQ)錯体を作製させた。この錯体が導電性を持つことを、テスターで確認させた。

  • 化学_実習風景電気を流す有機物についての講義。
  • 化学_実習風景電荷移動錯体生成の瞬間。溶液を混合し、混ざりあった部分から変色し始めている。

今回の活動を通して学んだこと(抜粋)

  • 有機物は電気を流すというイメージが無かったので、今回の実験で有機物にも電気が流れるものがあると分かり驚いた。それは(TTF)(TCNQ)錯体という物質であったが、TTF、TCNQそれぞれでは電気は流れないらしいが、この2つが錯体をつくることで電気が流れると分かり、興味深いと感じた。また授業で習った芳香族化合物の性質以外に「環状に単結合と二重結合が交互に並んだ時、4n+2個の電子なら非局在化」という性質があるのは初めて知った。いかに電子を隣の軌道に移動させやすく工夫できるかが電気を物質に流すことができるかの重要なカギになると思った。
  • (TTF)δ+(TCNQ)δ-という最初に発見された(と言われる)有機物の金属的電荷移動錯体を作った。 TTFやTCNQ、他に作った(TTF)(QCl4)は(TTF)(TCNQ)と同様に有機物であるが、これら有機物は一般に電気を流さない物質[絶縁体]である。 金属の銀、銅、アルミニウムなどは電気を流すのだから、電子配置だけで電気を通す、通さないが変わるのは驚くべきことなのだろう。 有機物である(TTF)(TCNQ)は特殊な構造を持っているから、例外的に電気を流すが、その理由が、炭素(C)原子が4つの原子の軌道を3+1個の2組に分けているというものであるから驚きだ。これを形にちなんでπ軌道と呼ぶが、このπ軌道はほかの起動と垂直にありそれも1つだけしか原子を持たない軌道であるので、イオン化が起こるという。 不思議だが、実際に起きているから興味深いことだ。

2016年12月3日

  • 実施場所

    吉田キャンパス 理学研究科2号館518号室

  • 当日の講師

    中西 和樹 准教授(無機物質化学研究室)、金森 主祥 助教(無機物質化学研究室)

  • チューター

    清水 太陽、木村 知貴、田中 歩

  • 実習の内容

    最初に、これから行う実験で取り扱う無機物質についての簡単な講義と、実験内容の説明を行った。その後融液冷却法による無機ガラスの作製、ゾル―ゲル法によるゲルの作製、電子顕微鏡を用いての多孔体の微細構造観察を行った。無機ガラスの作製では酸化ホウ素をベースとするガラスにおいて、アルカリ金属イオン(Na+)の含有量が得られるガラスの外観にどのように影響するか、および加えたCo2+による色の変化を観察した。ゲルの作製では、ゾル―ゲル法における典型的な前駆体であるテトラエトキシシランと、有機無機ハイブリッド材料の作製に用いられるメチルトリエトキシシランをそれぞれ同条件で加水分解、重縮合反応を行い、得られるシリカゲルおよびメチルシルセスキオキサンゲルの違いを観察した。微細構造観察においては、身近にある細孔をもつ多孔性物質や、研究室で作製した共連続構造と呼ばれる整った細孔構造などを、走査型電子顕微鏡を用いて観察した。

  • 化学_実習風景融液冷却法により作製したガラス試料
  • 化学_実習風景ゾル−ゲル法の実験でアンモニア水を加え、ゲル化する様子を観察
  • 化学_実習風景走査型電子顕微鏡で多孔体の構造を観察

今回の活動を通して学んだこと(抜粋)

  • ゾル・ゲル法によるシリカゲルの作成の原理としては、ケイ素アルコキドが水によって加水分解され、そこから生じるアルコールが一定量まで蓄積されることで反応が急速に進み、水に溶けきれなくなった疎水性のものが分離するという一連の流れがあることが分かった。また、後半に行った融液冷却法によるガラスの作成では、実験を通して、アルカリ酸化物をより多く含有しているものの方にはガラス化したものとは独立して結晶化するものがあり、その影響で不透明なガラスになることが分かった。
  • 今回は無機材料系の研究室にお邪魔しました。私は今まで有機系の研究室が多かったので、今回の体験は私にとって新鮮なものでした。特に興味深かったことはアルカリ酸化物と酸化ホウ素を含む2成分混合物からガラスを作ったことでした。その実験の中で青色をガラスにつけるためにコバルトを入れました。コバルトのd軌道が周りの配位子の影響を受け、軌道のエネルギー準位が分裂すると、その分裂した間のエネルギー差が赤色くらいの波長のエネルギー差であるため、白色光に通すと、赤色付近の波長が吸収され、青色が私たちの目に見えるということが面白かったです。また、分裂の仕方にも種類があり、それは周りの酸素の配置に帰属します。周りのO2- の方向を向いているコバルトのd 軌道は静電的な反発により高エネルギー状態になります。向いてないものはその逆でエネルギーが低い状態になります。また、家に帰りある疑問が生まれました。先生からコバルトへ配位子の配位のしたかは二種類(6配位の八面体/4配位の四面体)あると教えられ、また、それがアルカリ酸化物の割合(今回はNaCO3)によって変わるとおっしゃれてましたが、それがなぜアルカリ酸化物によって配位の仕方が変わるのかが気になりました。以下私の考察です。今回使ったB2O3(酸化ホウ素)にアルカリ酸化物が加えられると最初酸素のホウ素に対する配位は3でしたが、それにより4に変わります。BO4の正四面体の過剰な負電荷をもちます。そうすると、コバルトに電子をもらいに行きます。しかし、このとき、コバルトに対する配位子は過剰な負荷電荷をもちます。(BO3に比べて)よって一つあたりの電子の欲しさがアルカリ酸化物を入れる前よりも強いので一つのコバルトに4しか配意できないのであると考えられます。また、あまりアルカリ酸化物を入れない場合、先ほどより配位子一つあたりの電子の欲しさは弱いので、一つのコバルトに6つ配位子が配位できると考えました。以上が考察です。有機の材料も面白いですが、無機の材料の面白さに触れた1日でした。

2016年11月19日

  • 実施場所

    吉田キャンパス 理学研究科6号館663号室

  • 当日の講師

    西村 貴洋 講師(有機化学研究室)、野木 馨介 助教(有機化学研究室)

  • チューター

    吉田 悠人、齊藤 颯、永井 将貴

  • 実習の内容

    1.有機化学と触媒および実験実習内容に関する講義を30分間行った。
    2.実験実習を行った。具体的には、ロジウムを触媒として用いて、アリールボロン酸を不飽和ケトンに付加させる炭素−炭素結合形成反応を行った。ヒドロキソロジウム触媒存在下、3種類のアリールボロン酸と2-シクロへキセン-1- オンとの反応をそれぞれ行い、反応の後処理後、反応混合物を薄層クロマトグラフィーで精製した。得られた化合物をNMRで測定し、その化合物の同定を行った。

  • 化学_実習風景反応操作
  • 化学_実習風景単離操作
  • 化学_実習風景MR測定

今回の活動を通して学んだこと(抜粋)

  • 触媒、特に金属触媒についてその働きの仕組みを教えていただいた。白金やロジウムの触媒は車の排ガス処理などに実際に用いられており、今回はロジウム触媒で炭素‐炭素結合を実際につくることができた。大学の研究室での、高校とは大きく異なる精密な実験方法や測定も体験することができた。
  • 今までほとんど又は全く使ったことがないような薬品や器具を使うことができ、また有機溶媒の独特な香りがする実験室の中ででき、楽しく実験できたので良かった。今回は、ロジウムを使って炭素と炭素をつなぐということをしたが、ロジウムは今までに使ったことがなく、また触媒として使われていることが初めて知った。一見単純そうに見える反応も高価であるロジウムを使ったり、時間がかかる複雑な手順を行ったりと、合成はそう簡単にはうまくいかないと感じた。分子について知るための機械としてGCMSを使ったが、同位体についてもピークが出て、便利で実験で是非使ってみたいものと感じた。時間が思った以上に短かったので、もっとやりたかった。

2016年11月5日

  • 実施場所

    吉田キャンパス 理学研究科6号館252号室

  • 当日の講師

    林 重彦 教授(理論化学研究室)

  • チューター

    小山 糧、金曽 将弘

  • ボランティア

    田口 真彦、成 鋮

  • 実習の内容

    理論化学・量子化学の概略の理解のための講義とコンピュータを用いた量子化学の実習を行った。まず、講義では、生体分子を中心に分子機能の概略を説明し、次にそれらの分子の物理学的な記述のための量子力学の簡単な解説を行った。さらに、コンピュータを用いた実習の対象となる、物質の色の仕組みについて物理的な解説を行った。コンピュータを用いた量子化学の実習では、量子化学計算のシミュレーションを行い、一酸化炭素の電子分布の観察、及び、ポリエンの吸収波長に対するポリエン長の依存性や、視物質の発色団アナログ分子の静電相互作用による吸収波長の変化についての検討を行い、そのシミュレーション結果に関する量子力学からの解説を行った。

  • 化学_実習風景量子化学の講義
  • 化学_実習風景コンピュータ実習

今回の活動を通して学んだこと(抜粋)

  • 今回使ったソフトのような正確にシュレディンガー方程式の解を算出出来ないが経験的に解を算出するようなやり方で分子の反応性が可視化出来る事は驚いた。現在は遺伝子工学の分野で光により構造が変化するタンパク質を神経細胞に埋め込んでマウスの脳を操作する研究がされていると聞き、小説などでよく見る電脳世界などがとても近く思えました。
  • 計算機のシミュレーションが機能分子デザインに対して大きな役割を果たしており、脳科学にも影響を与えるということ。また、化学は実験だけではなくコンピュータを用いて全く実験をしない分野があり、コンピュータの進歩とともに理論分野でも多くのことが分かってきているということ。化学は量子力学の分野の理解が不可欠で、やはりサイエンスは互いに強いつながりを持っているということ。この3つを強く実感し、学ぶことが出来た。

平成28年度 実施レポート

過去の実施レポート