京都大学ELCAS(エルキャス)

実施レポート

[専修コース]物質の構造と機能

理学研究科 化学専攻 個体物性化学研究室

2017年8月13日

  • 実施場所

    吉田キャンパス 理学研究科6号館

  • 当日の講師

    前里 光彦 准教授

  • チューター

    留野 慎也、木村 要二郎

  • 実習の内容

    発表の準備(スライドの作成や説明内容の確認など)を行った。

活動を通して学んだこと

  • さらにスライドの改良とセリフ作りを進めた。簡潔なスライドにしたつもりだが、一度通して発表練習をしてみると、発表時間が5分と短すぎたことに気づいた。そこで、スライドごとの説明を丁寧にし、唐突に始まる説明に流れを持たせた。また、スライドに欠けていたまとめの部分、圧力誘起超伝導に関わるモット絶縁体とモット転移の説明などを追加した。  発表の練習の際に、レーザーポインターとあわせて発表するのは思ったよりも難しかった。落ち着いてプレゼンをするために、台本を完璧に覚えて、成果発表会に望みたい。

2017年8月11日

  • 実施場所

    吉田キャンパス 理学研究科6号館

  • 当日の講師

    前里 光彦 准教授

  • チューター

    留野 慎也、木村 要二郎

  • 実習の内容

    発表に向けて、スライドの作成をした。

  • 物質0811-1結晶構造の確認
  • 物質0811-2スライドの作成

活動を通して学んだこと

  • スライド作りを続けた。要点を残したままできるだけ簡単にするというのが難しかった。例えば、ET塩の構造を説明するときは、後ろの陰イオンの部分をXでまとめてしまうなどの工夫を学んだ。パワーポイントの操作自体には慣れてきたので、このような伝わりやすい工夫にも慣れることを目指して学校の課題研究のスライド作りなども意識したい。 スライドを作ると同時にセリフも考えた。いよいよスライドが完成に近づいてきた。発表がとても楽しみだ。 また、mercuryというソフトで実際にET塩の構造を回して観察し、κ型分子配列において二量体が三角構造を作っていることが理解でき、とてもスッキリした。物理化学の分野で分子構造などを考えるとき、空間認識能力が必要だなと感じた。

2017年8月6日

  • 実施場所

    吉田キャンパス 理学研究科6号館

  • 当日の講師

    前里 光彦 准教授

  • チューター

    留野 慎也、木村 要二郎

  • 実習の内容

    再度合成した試料を回収し、結晶構造と組成をX線回折実験およびSEM/EDXによって調べた。また、圧力を変えて、高圧下での電気伝導度測定を行った。

  • 物質の構造と機能_実習風景合成した試料の回収
  • 物質0806-2X線回折実験
  • 物質0806-3圧力印加

活動を通して学んだこと

  • 二週間前に作った結晶を回収し、単結晶X線解析のプレ実験を行った。結晶の形からそれが求めていたものだと判断できたら、SEM-EDXの元素マッピングの観察をした。Ag:Cuの比が少し大きかったが、それば物性に影響を与えるのか、比が同じものと性質は変わらないのか、そこまで研究できたらとても面白いと思った。 また、別の結晶で前回より大きな圧力(2.0GPa) をかけて伝導度の測定を開始した。少し小さな圧力(約1.8GPa)の時に、温度を十分低くしたときに抵抗値が大きく下がり始め、超伝導の傾向が見え始めていた。今回の測定で完全に超伝導が見られるかもしれない。連続した実験で実際に圧力をかけることで、分子間力の影響を振りきって電子が流れる様子が具体的にイメージできた。 家で作ったスライドの改良をした。家で作ったときもそうだったが、なかなか進まなかった。伝えたいことを簡潔に示しつつ、手早くきれいに作れるようになりたいと思った。有機物に電子が流れるイメージを格子とくまのイラストの対比で分かりやすく説明する例を教わった。同様に三角格子の結晶とその性質や研究の理由を書くのだが、これまでの実習の楽しさが感じ取ってもらえるようにしたい。

2017年7月30日

  • 実施場所

    吉田キャンパス 理学研究科6号館

  • 当日の講師

    前里 光彦 准教授

  • チューター

    留野 慎也、木村 要二郎

  • ボランティア

    吉田 幸大

  • 実習の内容

    常圧の電気伝導度測定結果を解析し、活性化エネルギーを求めた。さらに、クランプ式圧力セルを用いた高圧下での電気伝導度測定を行った。

  • 物質0730-1測定用試料の観察とサイズの確認
  • 物質0730-2油圧プレスを用いた圧力印可
  • 物質0730-3圧力セルを測定装置と接続するためにはんだ付けをしているところ

活動を通して学んだこと

  • 金属と半導体の、温度変化に伴う抵抗値の変化の違いとその理由について考えた。その後、電子密度、ボルツマン定数などから半導体の抵抗値に関わる活性化エネルギーを求めたが、その際に自然対数を用いた。基盤コースでも、積分を用いて一般相対性理論について考える機会があり、今回のことと合わせて、数学の勉強を早く完了させ、物理化学の学習をスムーズに進めたいと感じた。κ-(ET)2AgCu(CN)3の活性化エネルギーの値が、κ-(ET)2Ag2(CN)3とκ-(ET)2Cu2(CN)3の中間の値をとらず、より低い値になったのは、よりエネルギーの効率のよい構造になったということだろうか? サンプルに接続してもらった電極をはんだ付けし、圧力を変化させて電気伝導度の測定をした。前回に続いて細かい作業を行い、実験の準備だけで何時間もかけていることに驚いた。0.2GPaという圧力を手動で発生させて、ねじを締めて圧力を保ったまま持ち運べるようにするという装置を使わせてもらったが、圧力を加えるのはとてもデリケートで緊張した。 さまざまな手順を踏み、多くの知識を必要とし、時には建物の間を行ったりきたりするのを繰り返すうちに、研究は一人ではできないのだと強く感じた。

2017年7月23日

  • 実施場所

    吉田キャンパス 理学研究科6号館

  • 当日の講師

    前里 光彦 准教授

  • チューター

    留野 慎也、木村 要二郎

  • 実習の内容

    前回までの結果を踏まえ、再度条件を変えて試料を合成した。また、電気伝導度測定について学習し、実際に測定を行った。

  • 物質0723-1前回の結果を踏まえて合成方法の再検討
  • 物質0723-2合成実験における試薬の秤量
  • 物質0723-3電気伝導度測定装置について説明

活動を通して学んだこと

  • 結晶の合成を再び行った。前回の合成はあまりきれいな単結晶ができず、その理由として電流密度の大きさ、電流を流す時間、温度(低かったが高すぎてもだめ)、湿度があげられた。そして、それを改善するために変える条件を提示した。学校の課題研究で、ただなにも考えずむやみに条件を変えるだけの研究はだめだといわれたが、今回よい条件の変え方を学べたと思う。 合成は、前回より手際よく進められたと感じた。正確さは、まだ少し不安だ。今回は湿気と酸素を取り除くために注射針で溶媒を計りとったが、それが特に難しかった。 また、結晶の電気伝導度を実際に測定した。基盤コースでもビスマス系超伝導体で同様の実習をしたので、そのとき学んだ知識が役に立った。例えば、接触抵抗の影響を無くすために4端子法で接続をしたり、熱起電力の影響を無くすために電流の正負を切り替えて測定することなどを活かすことができた。このような電磁気学の知識の他、測定の際にプログラミングの技術が必要だと学んだ。物性物理の実験ひとつをとっても、広い知識が必要なのだと感じた。 段階が進んできたからか、慣れてきたからか、実習がとても楽しくなってきた。より化学、物理の勉強を進めて、研究にも全力で取り組めるようにしたい。

2017年7月16日

  • 実施場所

    吉田キャンパス 理学研究科6号館

  • 当日の講師

    前里 光彦 准教授

  • チューター

    留野 慎也、木村 要二郎

  • 実習の内容

    前回までに作成した試料の結晶構造と組成を調べた。X線回折実験およびSEM/EDXによる分析を行った。

  • 物質0716-1X線回折実験
  • 物質0716-2SEM/EDX装置に試料をセットする様子
  • 物質0716-3SEM/EDX装置による分析

活動を通して学んだこと

  • 前回、前々回の実習で合成した結晶を用いて、X線回折と走査型電子顕微鏡による、原子の種類の特定をした。X線回折において、モリブデン原子を用いて特定の波長のX線を出すことや、逆に結晶にX線を当てて反射した波の波長から原子の種類を特定することは、基盤コースで学習したことの知識を生かして考えられた。また、X線回折の様子は、基盤コースではブラッグ反射のスポットの写真しか見られなかったが、今回は装置を生で見ることができた。貴重な経験をさせてもらえているので、頑張って研究の地道な作業もこなしていきたい。 それでも、きれいな形の結晶ができておらず、X線回折が困難だったため、研究自体はあまり進まなかった。結晶が汚くなった原因は、電流密度が大きすぎたことと電圧をかける期間が短すぎたこと、私が雑に扱ってしまったことが原因かもしれない。まだまだ我慢強く研究に取り組みたいと思う。

2017年5月28日

  • 実施場所

    吉田キャンパス 理学研究科6号館

  • 当日の講師

    前里 光彦 准教授

  • チューター

    留野 慎也、木村 要二郎

  • 実習の内容

    前回行った電解酸化による結晶作成の結果を調べた。電解セルから試料を取り出し、顕微鏡で観察した。その結果を踏まえたうえで、もう一度電解酸化法による有機伝導体の合成を行った。

  • 電解セルから試料を取り出す準備
  • 吸引ろ過による試料回収
  • 顕微鏡による結晶試料の観察 1
  • 顕微鏡による結晶試料の観察 2

活動を通して学んだこと

  • 前回合成したκ-(ET)2AgCu(CN)3の結晶をかき出し、顕微鏡で観察をした。3時間の計量と2週間の加電圧という手間に対して砂粒のような結晶しか取れないのを実際に目で見ると、だんだんと「研究」の大変さが分かってきた気がする。それでもきれいな六角形や菱形の結晶ができてとりあえず安心した気持ちになった。
    その後、前回と同様にκ-(ET)2AgCu(CN)3の合成を行った。前回はあまり意識できていなかったが、結晶をかき出す際に異物混入を防ぐため金属ではなくプラスチックのスパチュラを使うことや、酸素除去のために攪拌の前に窒素フローを行うこと、日光が当たらないよう試験管をアルミホイルで覆うことなど正確なデータを取るためのさまざまな手順を学んだ。特に、プラチナ電極をガスバーナーで加熱して不要な物質を取り除く作業を体験させてもらったときに、実験がいかにデリケートなものかを実感した。この感覚は、これからの研究で大事にしたい。 講義では、前回までわからなかったモット絶縁体と通常の絶縁体の違い、モット絶縁体は温度変化によって相転移するが通常の絶縁体はそうでないことのイメージを、少なくとも今は理解できた。学校の化学の授業でも学んだが、物性には電子が大きく関わっている。それに加えて、実験室の案内をしてもらったときに、原子核も電子と同様にスピンの性質を持っているときいて、新しく興味を持った。 次回以降の実習で、得られた結晶の分析をする。CuとAgの区別をどうするのだろうかと疑問に思っていたが、X線を当てて反射した波のスペクトルを観察するらしい。これは、物理の基盤コースで学んだ炎色反応やフラウンホーファー線の仕組みとと関わっていると感じた。引き続き集中して、大学の高度な研究について少しでも多くのことを体験し、学びたい。

2017年5月14日

  • 実施場所

    吉田キャンパス 理学研究科6号館

  • 当日の講師

    前里 光彦 准教授

  • チューター

    留野 慎也、木村 要二郎

  • 実習の内容

    最初に有機伝導体に関する研究テーマについて議論した。その後、電解酸化法による有機伝導体の合成方法について学び、実際に合成を行った。

  • 電解合成に使用する支持電解質の秤量
  • 合成に使用する有機溶媒の取り扱い方を学んでいるところ
  • 電解用セルに有機溶媒を流し込んでいるところ

活動を通して学んだこと

  • これから行っていく実習のテーマと目的を再確認した。有機超伝導体BEDT-TTF (C6H4S4) (以下ETと表記)塩であるκ-(ET)2Ag2(CN)3、κ-(ET)2Cu2(CN)3は、それぞれ温度・圧力と電子のスピン(それにより変化する磁性や導電性)との関係や、結晶構造がわかっている(κ-(ET)2Ag2(CN)3のAg原子をCu原子に置換したものがκ-(ET)2Cu2(CN)3である)。そして、その2つの物質を化合した結晶(κ-(ET)2AgCu(CN)3)ができるということも知られているのだが、その具体的な性質は明らかにされていない。その明らかにされていない性質を調べるのが実験の目的である。それによって、電子のスピンがある程度の相互作用によって制限され、ある程度は自由である「スピン液体」の特性の解明につながるかもしれない。今日までに何度か自宅でもテーマを復習したが、理解できなかったり理解はできてもつながらなかったりしていたものがある程度整理できてよかった。今週末に再び確認したい。 また、今回から実際にκ-(ET)2AgCu(CN)3の結晶の合成をさせてもらった。ETやAgCN、CuCNをはかりとって溶媒トリクロロエタンとアセトンニトリルに溶かしただけだが、2時間半はかかった。この後電極をさして、2週間も電圧をかけてETを酸化させるのだという。危険な物質を、数mgという細かな値だけ計りとるのは、先生から伺っていたとおり根気のいる作業だと実感した。結晶の性質を調べる以前に、2週間かけて作った結晶がうまく完成していないことも頻繁にあるらしい。このような地道な作業が、科学の発見や成果につながる大事な要素なのだと学んだ。 実習の説明でETを酸化させるという話を聞いたとき、はじめ電子の授受にかかわる広義の「酸化」の意味を知らなかったために、混乱した。化学・物理の基礎的な知識の勉強をもっともっと進めなければいけないと感じた。だが一方、完成した有機超伝導体の結晶構造を計算する話を聞いた際に、X線回折によるブラッグ反射からミラー指数を使うという、基盤コースで学んだ知識とつながる部分もあったのが嬉しかった。
  • 理論部分についての補足と、今回の実習の大きな目標である「(ET)2Cu2(CN)3と(ET)2Ag2(CN)3を合成して出来た物質の性質を調べる」ため、早速両物質の合成に取り掛かった。今回は合成を通して、中学・高校では使ったことのない実験器具(スパチュラ・マグネティックスターラーなど)や試薬(CHCl2-CH2ClやCH3-CNなど)の扱い方(例えばNを含む化合物を酸と反応させるとHCNが発生して危険、など)、あるいは操作(酸化を防ぐためのN2フロー)、そして実験の記録のとり方・メモしておくとよいことなど、実践的なことを多く学んだ。

2017年4月15日

  • 実施場所

    吉田キャンパス 理学研究科6号館

  • 当日の講師

    前里 光彦 准教授

  • チューター

    留野 慎也、木村 要二郎

  • 実習の内容

    電気を流す有機物について学んだ。実際に、電子供与性の有機分子と電子受容性の有機分子をそれぞれ溶かした溶液を混ぜ合わせて錯体を合成し、得られた固体に電気が流れることを確認した。

  • 物質の構造と機能_実習風景固体中の電子について学んでいるところ
  • 物質の構造と機能_実習風景合成に使用する有機分子の秤量
  • 物質の構造と機能_実習風景合成して得られた物質の回収作業

活動を通して学んだこと

  • この分野での実習で「物質の構造」をもとに新たな物質を合成して、物理・化学的な観点からその物質の性質を調べることに魅力を感じた。超伝導体は基盤コースでも学習して、ある程度は理解できていると勘違いしていたが、超伝導の中でもいくつかの分野があり、幅が広く奥も深い学問だと実感した。基盤コースでは臨界点の高いビスマス系超伝導体を使ったのに対し、今回は有機系超伝導体についての実習をした。有機物で超伝導を行う利点にのひとつについて、材料が手に入りやすく、軽くしなやかであるためにスマートフォンのディスプレイなどに応用されることを学んだ。 日本の物理化学者の権威である細野先生の著書に、磁性を持つ鉄を用いた鉄系超伝導についての話があり、その中に超伝導は「現象としてはきわめてわかりやすいのに、学問としてはおそろしくむずかしい」科学のロマンだとあった。私も超伝導には非常に興味があったが、その超伝導へ有機化学の面からアプローチするのは、新鮮でとても面白いと思う。この研究がもっともっと進めば、超伝導体自体がさらに社会に身近な存在になると思う。 物理と科学を用いた物質の構造と機能についての研究は、有機化学や無機化学、エネルギー、波動など多様な分野にまたがる非常に幅の広い学問だと感じた。場合によっては生物のタンパク質構造などにもかかわると予想する。だから、これからの実習で、視野を広く持つのを常に心がけたい。
  • 有機物が超伝導状態になる「有機超伝導」について学びました。通常、有機物は共有結合のために電気を通しません。そこで、有機超伝導体は共有結合を切り、電子供与体(電子を与える、芳香族アミン・ジアミンなど)と電子受容体(電子を受け取る、ハロゲンなど)を使って自由に動ける電子を作り出すことで、電気が流れるようにしているそうです。また、今後の実習の目標として、「二種類の超伝導体・・・(ET)2Cu2(CN)2と(ET)2Ag2(CN)2を合成し、どんな性質を持っているか調べる」ということを掲げました。

平成29年度 実施レポート

年度別の実施レポート