京都大学ELCAS(エルキャス)

実施レポート

[基盤コース前期]C群 2017年10月21日

野生霊長類の研究から人類の起源と進化を探る

理学研究科 霊長類学 中川尚史 教授

われわれ人類の生物学的な定義は直立二足歩行をする霊長類ですが、それ以外にも人類はさまざまな特徴的な形質をもっています。霊長類学は、遺伝子、脳・神経、心理・認知、行動、形態、社会・生態などに関する人類以外の霊長類の諸形質を調べることで、その形質が人類固有なのか、あるいは進化の階梯をどこまでさかのぼれるのか、その形質を生み出した淘汰圧は何かを探るところに存在意義があります。本講義では、私が野生のニホンザルやパタスザルの研究を通じて得た、人類の社会的慣習の起源、その長い肢を生み出した淘汰圧について、ELCASらしい体験型に近づけるべく映像を交えてお話します。

人工知能入門

情報学研究科 人工知能 西田豊明 教授

人工知能技術は、知覚、インタラクション、推論、問題解決、言語運用、連想記憶、学習といった、人に特有な知的な情報処理を自律的に実行できる人工システム̶人工知能̶を実現するための技術です。本講義では、まず、過去60年間にわたる人工知能技術の発展の過程で培われてきた、知的探索法、知識の表現と利用、機械学習、会話システムの原理を俯瞰します。次に、人工知能技術が日常生活から社会基盤に至る社会の様々な場面でいまどのように応用され、どのようなインパクトを与えつつあるかを概観します。最後に、これからの人工知能技術が人間社会に有益であるために注意すべき事柄について検討し、みなさんがどのように貢献し得るかについて、議論します。

[基盤コース前期]C群 2017年10月7日

化学的手法に基づくアルツハイマー病の新しい予防戦略

農学研究科 生命有機化学 入江一浩 教授

アルツハイマー病は認知症の中で最も患者数の多い神経変性疾患であり、本疾患への対策が急務の課題となっています。私どもは、アルツハイマー病の原因物質と考えられているアミロイドβタンパク質(Aβ)を対象として、医学ではなく農芸化学(生物有機化学・天然物化学)の視点から研究を行ってきています。Aβは、2及び3量体を基本単位としてオリゴマー化(凝集)することにより神経細胞毒性を示します。本講義では、Aβの2及び3量体の構造、ならびに毒性オリゴマーを認識する抗体を用いた新しい診断手法の開発や、食品を含む天然素材に含まれるAβ凝集抑制物質の作用機序について紹介します。

廃棄物の資源・エネルギー性と有害性

地球環境学堂 環境工学 高岡昌輝 教授

皆さんが使用している製品はやがて寿命が来て、その機能が失われ、皆さんにとっては価値のないものとなり、廃棄物となります。単に求めていた機能が失われたもので物質的には資源・エネルギーの塊です。新興国の経済発展から資源の枯渇・不足も叫ばれ、地球温暖化問題も深刻さを増しています。廃棄物の資源・エネルギー的な価値は従前に比べて増してきています。一方で、廃棄物から何らかの資源やエネルギーを取り出そうとすれば、それを処理する必要があります。その処理の過程から排出される有害物質が人間の健康や環境を脅かすことがあります。本講義では、廃棄物のエネルギー・資源性及び有害性について考えてもらいたいと思います。

[基盤コース前期]B群 2017年10月21日

生物と温度について

工学研究科 合成・生物化学 梅田真郷 教授

私たちは、日頃から今日は暑いなあ、寒いなあ、と言っていますが、生物の長い歴史を考えると、生物種の存亡を左右する最も大きな要因の一つが温度です。一方、私たちの体は、炭素や水素、酸素などの限られた原子の組み合わせによって作り出されるタンパク質や脂質などの分子から出来ています。このような分子の働きや集合状態を規定するのも温度です。今回の講義では、地球温暖化による生物種の大量絶滅、生物の温度適応や温度センサー、動物の体温調節など、生物と温度の関わりについて分子から環境までの様々な視点から考えてみようと思います。

薬と受容体の化学

薬学研究科 構造生物学 加藤博章 教授

薬が効くとはどういうことなのか、化学の言葉で考えてみましょう。細胞膜には情報を伝達する分子の標的としてタンパク質で作られた受容体と呼ばれる分子があります。そして、ある受容体に、ある分子が作用すると、その受容体に変化が生じて細胞内へ信号が伝わり、生理学的な変化が引き起こされます。例えば、アドレナリンというホルモンは、アドレナリン受容体に作用して、心臓の心拍数を上昇させたり、血管収縮を引き起こしたり、気管支の拡張を促したりすることが知られています。そして、アドレナリンの作用を真似できる分子やその作用を遮断する分子が作られ、薬として用いられています。では、それらの分子にどんな特徴があれば、アドレナリンと似た作用を示したり、反対にその作用を邪魔したりできるのでしょうか。そもそも、アドレナリンが受容体に作用するとは、それら分子の間にどんなことが起きているのでしょうか。これら薬と受容体の作用メカニズムのなぞに化学で迫っていきましょう。

[基盤コース前期]B群 2017年10月7日

身近な栄養素の意外な働き

農学研究科 食品機能学 佐藤健司 教授

食品中の3大栄養素の中で、糖質・資質はエネルギー源となり、タンパク質は体のタンパク質を合成する材料になると習ってきたと思います。もちろん、これらは重要な働きではありますが、糖質、脂質、タンパク質の代謝産物は生体の炎症反応、解毒反応、創傷治癒に大きく関わっていることが急速に明らかになってきています。また意外な成分がエネルギー源になっていることも分かってきています。本講義では、これらの食品成分の新しい機能を紹介し、極端な食生活の問題点や食品成分を用いた健康増進や病者のサポートに関わる新しい動きを紹介します。

原子核の不思議な振る舞いと元素の起源

理学研究科 原子核理論 延與佳子 准教授

私達の身の回りにある物質は様々な種類の元素からできています。陽子や中性子という粒子(核子)が数個~数百個集まって原子核を構成し、それを芯にして水素や炭素、鉄、金などの元素が存在しています。今の地球上にいろいろな種類の元素が存在しているのは、宇宙の歴史の中で星が誕生と終わりを繰り返す間に、核子が次第に集まったり離れたりを繰り返しながらいろいろな核子数の原子核が形成されていったからだと考えられています。最近では新しい元素を大型加速器を使って人工的に作ることも可能になりました。粒子の集まりである原子核をミクロに見ると様々な不思議な現象が見られます。原子核全体が変形したり、粒子がいくつかの塊に分かれたクラスター構造ができたり。ミクロな世界で何が起きているのか、元素がいつどこで作られたか、そんな不思議に触れてみましょう。

[基盤コース前期]A群 2017年10月21日

トンネル建設の環境問題

地球環境学堂 地盤工学 勝見武 教授

トンネル工事では様々な環境問題について配慮しなければなりません。中でも、トンネルを掘ることによって発生する「土」の問題は重要です。土は消えてなくなるわけではありませんのでどこかに持っていくことになりますが、このような土を捨てるのではなく、別の工事の資材として使われることがよく行われます。しかし、中にはヒ素や鉛などの有害物質をもともと含む土もありますので、土の利用にあたっては環境に悪影響を及ぼさないよう注意が必要で、そのための様々な技術が開発・適用されています。本講義では、物理や化学の基礎的な現象を活かしたものから最新の情報通信技術まで、土の利用を可能にする多様な技術とそのための研究について紹介します。

科学技術計算の基礎

情報学研究科 計算力学 西村直志 教授

科学技術に関わる計算は、通常計算機を用いて行います。計算機を用いた計算では人間の手計算とは異なる方法が用いられるため、手計算では到底行えない規模の計算が可能になりますし、一方手計算では想像もつかない問題が生じることがあります。この講義ではまず計算機を使って実数を表現する方法について述べ、精度のよい計算を行うためにはどのような工夫が必要か、具体例を交えて議論します。また、規模の大きい問題を効率よく解くための方法について解説します。

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平成29年度 実施レポート

年度別の実施レポート