京都大学ELCAS(エルキャス)

実施レポート

[基盤コース後期]霊長類学

分野

2018年1月20日

  • 実施場所

    霊長類研究所 特別会議室

  • 当日の講師

    大石 高生 准教授(霊長類研究所 神経科学研究部門 統合脳システム分野)

  • チューター

    上野 瑠惟

  • 実習の内容

    筋肉の活動を電気的に計測する筋電計を電子工作により自作した。また、その筋電計を用いてさまざまな条件で自分の筋活動を計測した。これにより、興奮性細胞であるニューロンや筋肉の働き、脳の機能について考察した。霊長類の脳標本、霊長類を含む哺乳類の頭骨標本を観察することにより、脳の構造の概要および頭部の機能と形態との関連を考察した。

  • 筋電計を電子工作で自作しているところ
  • 自作の筋電計で筋活動に伴う電気活動を計測しているところ
  • ヒト、各種類人猿、トラ、ウサギなどの頭骨(やレプリカ)の解説を聞いているところ

活動を通して学んだこと

  • オシロスコープを使って自分の筋肉内を流れる電気信号を観察した。実験のための装置も自分で作り、実際に手首を動かしたり力を入れたりしたときにどこの筋肉にどのくらいの強さの電気信号が流れるのかをみた。自分の体内で知らぬ間に起こる目に見えない変化が目で見えるグラフという形で表されており、不思議な気持ちになった。また、この電気信号を使うことで、機械にも人間と似たような動きをさせることができるらしい。そのことを実験する装置も持って来て下さっていたのだが、うまく動かず、結局見れずじまいだったので、ぜひ、その装置も自分で作ってみたいと思った。 また、さまざまな動物の頭蓋骨を比較したり、本物のサルの脳みそに触れてみたりもした。高校では絶対に見れないようなものを見ることができた。
  • 霊長類の脳を学ぶというテーマでしたが、「霊長類は体に対する脳の割合が大きい。ヒトはさらに大きい」という単純な話ではありませんでした。生体電気信号の仕組みや、頭蓋骨の“霊長類とその他の種”という種間比較を通して、脳は複雑で様々な役割を果たしていることを、何となくの常識ではなく科学的な視点で見つめることができました。霊長類の空間把握などの脳機能は他種より優れていると分かった一方、「脳機能が優れていない動物は体の動きで記憶する」という話を聞きました。イヌなどは体を動かす方向によって、餌が置かれている位置を記憶する事があるそうです。人間が老いなどにより脳機能が低下した場合、「メモをとる」ことをします。記憶を体でなく道具に託すのは、自らの能力を退化させ得る行為だと思います。ヒトは社会の形成で「生き延びること」を第一に考える必要がなくなり、それがヒトの発達に大きくかかわったのだろうと感じました。
  • 主に電子回路を組み立てて筋肉の電気信号をオシロスコープに表せる装置をつくった。半年ほど前、スーパープレゼンテーションというテレビ番組を見ていてちょうど同じ内容について聞いたのを思い出した。脳科学の研究者による、脳科学をもっと身近にしようという趣旨のプレゼンであり、ちょうど今回組み立てたような簡単な筋電計を紹介していた。しかし簡単だとは言うものの、そのときの自分にはテレビの中の遠い存在であったので、今回実習して少し感動した。というわけで今回の実習の最初の数時間は皆で黙々と電線を基板に差し込む作業をやっていたのだが、そのとき印象に残ったのが、仕組みは分からなくてもつくることができる、とおっしゃったことである。正直なところ実際私もあまり仕組みを理解せずに作業していたので情けないが、一方でこれは、研究が多くの人の積み重ねで成り立っているということをよく表しているとも捉えられる。つまり、脳のしくみを調べることだけでなく、調べる技術の研究も脳科学には必要なのである。当たり前のことかも知れないが、改めてそう感じた。

2018年1月6日

  • 実施場所

    霊長類研究所本棟

  • 当日の講師

    今井 啓雄 准教授(霊長類研究所ゲノム細胞研究部門ゲノム進化分野)

  • チューター

    西栄 美子、糸井川 壮大

  • ボランティア

    伯川 美穂

  • 実習の内容

    各自の口腔細胞を綿棒で採取後、sample-to-SNP kitで直接リアルタイムPCRにより以下の遺伝子のSNP解析を行った。
    TAS2R38:苦味受容体の一つで、PAV型とAVI型で苦味物質PTCに対する応答強度が異なる。PAV型が反応型。
    ATCN3:筋肉関連遺伝子で、R型とX型で速筋の付き方が異なる。R型の方が速筋がつきやすいため、短距離走が得意。並行して、PTC試験紙による味覚反応テストと運動能力に関するインタビューを行った。これらの表現型と遺伝子型の対比を遺伝子型判定後に議論した。
    今回は解析時の比較対象数を増やす目的もあり中京大学スポーツ科学部の大学生との合同授業として実施した。結果として、ATCN3については中京大の学生の知識も役立ち、結果の解釈については高校生、大学生、それぞれからの活発な議論が展開された。

  • リアルタイムPCRの結果について、チューターから説明を受けている様子
  • 助言を受けながら、結果についてまとめている様子

活動を通して学んだこと

  • 今回驚いた内容に、「テーマと霊長類研究とのつながり」があります。今までは、テーマ名に「言語」「知性」など、ヒトの特性を示す単語が含まれており、そのテーマに沿ってどのような過程で「ヒトとは何か」を探るのかが予め分かりやすい実習ばかりでした。しかし今回は「食を探る」というテーマで、初め聞いた際、果たしてどのようにヒトと関連付けるのか、他の動物学と同じでは無いのかと疑問に思いました。ですが、「ヒトに比べ周囲の食物環境が十分でないサルは、味覚遺伝子に関する淘汰が起こりやすい」という話を聞き、思いがけない形で食と霊長類研究がつながっていると驚きました。「ヒトを探る」と一口に言っても様々なアプローチがあり、それは遺伝子が限りなくヒトに近い霊長類を通じてこそ可能なのだと納得しました。
  • 遺伝子情報をたった1時間ほどで解析することができるということに感動したとともに、これによって性格や考え方の傾向などまで分かってしまうのだと思うと軽い恐怖を覚えた。今回は苦味と運動能力についてデータを取った。私は遺伝子から出た結果どうりであると感じたが、データと自分の感じ方が違う人もいて、デザインベイビーなどがいる今もちろん遺伝子の操作は直接望んだ能力をあげることを可能にするかもしれないが、それと同じくらいかそれ以上にそこからどういった環境の中でどういった経験をしていくのかということがとても重要になってくるのではないかと思った。
  • 遺伝子の違いについて研究させてもらった。身長などの遺伝子の違いなどは知っていたが、苦さの感じ方の違いも遺伝子が関わっているとは初めて知った。また、運動能力についての遺伝子も自分は短距離と長距離どちらが得意なのか、PCRを使ってみることができた。
  • おのおののDNAを調べ、味覚(PTCに対する苦味受容体)・運動神経に関わるとされる遺伝子についてそれぞれ型を特定した。どちらも耳にしたことがあり、自分の遺伝子を知れること自体が面白かった。さらに霊長類と遺伝子とを結びつけて考えると、進化がどのようにして起こるか、というのが大きな研究のテーマの一つとなるだろう。進化は自然淘汰などにより少しずつすすんでいくが、それのみでは現在までの進化のスピードが説明できない。突然変異も関わっているのではないか。というように聞いたことがある。そうして振り返って調べてみたところ、PTCの苦味受容体に関わる遺伝子は変異が起こりやすいという。PTCの苦味を感じないのは突然変異の一種なのに、日本人では10%前後、白人は30%と高い割合なのは興味深い。これは進化が突然変異によりおこるのも納得できるかもしれない。
  • 実際に自分たちの遺伝子を取り出して増殖し、特定の遺伝子の有無について調べた。事前には、試験紙をなめて苦みを感じるかどうかや自らの運動の出来不出来によって遺伝子型を予想し、実験の結果と照合した。私の結果は予想とほぼ一致するものとなり、遺伝子と自分の関連の深さを体感した。しかし、人によっては予想と結果が異なる人もおり、その違いはどうして出るのかということを疑問に思った。子供の特徴を決定するのは遺伝子か生育環境かとよく言われる通り、環境によっても変わるのかもしれないが、実際の所はどうなのかを調べてみたい。
  • 味覚と運動能力という面から遺伝子を見てみました。試験紙を舐めてみて苦いと感じる人と感じない人がいて、その違いは苦味遺伝子の違いだというものでした。私は苦いと感じたのですが、結果はヘテロでした。苦味の受容体は25種類もあり、甘味の受容体の1種に比べて遥かに多いので人は苦味に大しては敏感なのかなと思いました。運動能力については遺伝子を見ることでその人が秘めている可能性がわかるとのことでこの技術を活用してアスリートの育成に役立てるのは合理的な方法だと思いました。

2017年12月16日

  • 実施場所

    霊長類研究所

  • 当日の講師

    友永 雅己 教授(思考言語分野)

  • チューター

    川口 ゆり、瀧山 拓哉

  • 実習の内容

    スカイラボと呼ばれる設備において、チンパンジー4個体を対象に、アラビア数字の系列の学習課題を複数の条件で実施した。こののち、普段チンパンジーが実験を行っているブース内において参加生徒および教員、チューターの計9名がチンパンジーと同様の実験を行いデータを取得した。 実験終了後、別室において、エクセルを用いたデータの分析の仕方について指導した。データは各自持ち帰り、後日、教員からさらなる分析の手順等の指示をメールにて送付した。

  • スカイラボでの実験の様子
  • スカイラボでの実験の様子
  • スカイラボでの実験の様子
  • スカイラボでの実験の様子

活動を通して学んだこと

  • チンパンジーを近くで観察でき、また実験できたので、その生態についてよくわかった。自分たち自身も被験者となってチンパンジーと同じ条件で実験をすることで、チンパンジーと人間の違いなどたくさん気づけた。
  • チンパンジーとヒトで同じ条件で出てきた数字を順番にタップする実験を行い、その結果に基づく分析をしました。これまでの活動は実験することが主で、実験からその結果の分析までを行うのは今回が初めてでした。今回の活動から、研究では自分の興味のある所を自分の考えた方法で好きなように調べることができることを実感しました。今日は先生が分析の方法をその場でいくつか考え、皆でプログラムを書いて検証したのですが、1つの結果からだけでも正答率や回答までにかかる時間、何番目の数字の正答率が悪いかなど様々な側面から分析することができました。他にも、数字の配置による正答率の違いなども分析でき、さらにヒトの結果とチンパンジーの結果を比べることでチンパンジーから人間に進化する過程でどのように認知機能が変化したのかを知ることができます。結果のデータさえあれば、自分の思いつく限りの様々な事を分析できるのです。 今回の実験データはUSBメモリーに入っているので家でも自分で分析を進めて行きたいです。
  • 実際にチンパンジーとヒト(つまり受講生)が被験者になり、数字を選んでいく行動を記録した。数字の個数、順序、隠すかどうかなど、すこしずつ条件を変えて6回ほど実験をした。訓練効果を相殺して客観的なデータを集める方法や、言葉の通じないチンパンジーにどうやって被験してもらうのかなどを具体的に学んだ。最後に皆で実験結果を分析したり議論したりしたのだが、これが非常に盛り上がって興味深かった。数字をぱっとみて覚えて選んでいくとき、写真のように覚える映像記憶を使っているのか、それとも作業記憶、ワーキングメモリを使っているのか。チンパンジーは自然下でその能力を何に使っているのか。実際に被験して思うこともあり、面白いと感じた。こういった思考の研究は、研究方法が技術的に実現できるかというよりは、既存の技術をどう組み合わせるかが思いつくかにかかっているのだと思う。否、他の分野もそうなのかも知れない。
  • 実際に自分がチンパンジーと同じ立場にたって実際をするのは初めてのことで、思っていた以上に受ける側は大変だと思ったし、集中力をいかに保てる状態かというのがパフォーマンスに大きな影響を与えるということが分かった。チンパンジーは人間とは違うため調べたいことを調べるのはとても難しいけれど、様々なアプローチの仕方があって興味深いと感じた。
  • 何度かテレビで見たことがあったチンパンジーの短期記憶を実際に見ることが出来てとても驚いた。また条件を少し変えて実験を行うことで様々な仮説が立てられるようになるのも面白いと思った。結局、チンパンジーは映像で記憶しているのかひとつひとつを見て記憶しているのか、とても知りたい。
  • 今回はタッチパネルを用いて、チンパンジーを被験者とした実習を行いました。私の担当した子はせっかちな性格のようで、パネルが反応しない内に次の作業に移って失敗する、といった様子も見受けられました。他の多くの理系学問と異なり、「被験者の性格」という数字で表しにくい要素をふまえたデータ解析を要するところが、霊長類学の難しい所であり、また面白みの一つだと感じました。

2017年12月2日

  • 実施場所

    霊長類研究所 大会議実・406号室

  • 当日の講師

    西村 剛 准教授(霊長類研究所 系統発生分野)

  • チューター

    若森 参

  • 実習の内容

    骨のかたちと機能を理解するための骨格標本の組み立てとスケッチの実習と、化石研究に必要である標本の模型作成実習を行った。見本となる組み立て済みの骨格と教科書を手本として、ばらばらの骨格標本から、各骨の部位と左右を同定し並べていく。部位によって異なる形態を頼りに同定していくが、適宜、その形態のもつ機能的意義を解説し、機能形態の理解とそれに基づく同定する目をもつことを目的とした。つぎに、各自、骨を選んでスケッチを行った。スケッチを行うことで、自らが見出している形態学的特徴と、見えているのに見出し得なかった特徴を理解することができる。適宜、解説を加えて、それぞれの形態学的特徴の意味の解説を行った。模型作成実習では、サルの歯の模型を作成した。印象材で型をとり、その型に樹脂を入れて模型を作成する一連の作業を実習した。これを通じて、化石を含む形態学的研究の手法、見方、得られるデータの機能的解釈などを体験することができた。

  • 骨格標本の組み立てにチャレンジ
  • 骨格標本のスケッチ
  • 骨格標本から型(モールド)を取っている

活動を通して学んだこと

  • 骨の組み立ては、骨の知識も必要であるが、それだけではなくて、構成能力も必要になってくるのだなと感じた。結構難しくて、先生に何度も教えてもらいながらしたが、骨がきちんと組み立てられて、自然に骨の構造がわかることができた。
  • サルを骨を使って観察しました。実際にワオキツネザルの骨の標本を組み立ててみたのですが、思ったよりも難しかったです。組み立てる時は関節の連結と体の左右に注意します。関節を実際に作って動かすとどこの関節をどのように使って体を動かすかがよく分かりました。また、骨を見たり触ったりすることで、サルが病気にかかっていたかどうかや筋肉がどこについていたかも分かりました。これまでは骨からは体の概形しか分からないと思っていたので体の内側のことについても分かると知り驚きました。 また、サルの骨をたくさん集めた資料室を見学することもできました。10000以上もの個体の骨が管理されているそうです。こんなに骨を集める理由について「今使う人がいなくても、将来の研究者のために集め続けている」とおっしゃっていて、未来のことまで考えているのだな感心すると同時に自分は将来自然科学の発展に貢献するであろう骨を実際に見て学んでいるのだと思って興奮しました。そして、私も将来の発展に貢献する一人になりたいと思いました。
  • パタスモンキーの骨を組み立て、仙骨と大腿骨をスケッチした。スケッチは、自分に何が見えているかを他人に伝えるためだということを学んだ。骨の表面は、関節として滑りやすく出来ている部位と筋肉が張り付くために粗くなっている部位とがあり、その境界に沿って線を入れるのが大切である。 また、今回の実習では出来なかったが、骨の形を調べることで食性や歩き方などもわかるという。私の担当したパタスモンキーは、他の班員のものよりも手足が長く頑丈だと感じた。そして今インターネットで調べているのだが、パタスモンキーはサル目の仲間のうちで走行スピードが最も速いらしい。つながった。こういう風に研究しているのか、と追体験しているようでとても興味深い。 その後、歯のキャスト・モールドを作った。つまりレプリカである。歯医者で私もやったことがある。作っていて思い出したのだが、比較的新しい化石だと歯に歯石がついていて、食べ物を特定できる、と聞いたこともある。 骨を調べる利点は、静的であるためデータが集めやすく、扱いやすいということだと思った。
  • 今回の実習ではサルの骨格標本に触れるなど、霊長類研究者のイメージに近い活動が多かったです。私が骨格組み立てを行った個体は関節が大きく曲がっていたのですが、それは種の特徴ではなく、生前の病気の為だという事を教えて頂きました。「形態学において、見つかった標本の特徴が、個体に限ったことなのか、種全体に見られることなのか見極めることが大切」と聞きました。膨大なデータから必要な要素を見付けて、また他と比較する視野の広さが大切だと実感する事ができました。

2017年11月18日

  • 実施場所

    霊長類研究所

  • 当日の講師

    今村 公紀 助教(ゲノム進化分野)

  • チューター

    黒木 康太、岡田 佐和子、仲井 理沙子

  • ボランティア

    北島 龍之介

  • 実習の内容

    実習ではチンパンジーおよびニホンザルのiPS細胞の免疫染色とアルカリホスファターゼ(AP)染色、レクチン染色を実施した。高校生を3チーム(3名、2名、2名)に分け、各チームにチューター1名がつきつつ、ボランティア学生と今村の2名で全体を監督する体制をとった。実験前に簡単な座学で実習内容の説明を行ったが、各チームにおいて実験中に随時補足説明や質問に答える形をとることで、高校生全員が実験の内容と意味を理解できていたように思われる。免疫染色、AP染色共に、各自異なる結果が出るように実験サンプルを用意し、実験終了後には全員の結果を照らし合わせて総合的な考察を行った。

  • 実験開始前の座学
  • 実験の様子①
  • 実験の様子②

活動を通して学んだこと

  • 実験がほとんどで、実験から学んだことが多かった。例えば、今まで私がしてきた実験は、大雑把にしてしまったこともあったが、少し量が違うだけで、実験結果が大きく変わってしまうこともあるのだと学んだ。実験では、皆それぞれ違う結果が出て、たくさん議論をすることができた。
  • これまでの霊長類学の講義は霊長類と直に向き合いヒトと行動の仕方などを比較することで進化の仕組みを探るというものだったが、今回の活動では神経や遺伝子といったミクロな視点で霊長類とヒトを比較することに関する講義を受け、実際に霊長類のiPS細胞を染色する実験を行った。霊長類学といえばフィールドワークという固定観念を持っていた私は研究室に入って実験できるとは思ってもいなかったのでワクワクした。 また、先生がチンパンジーはほとんどアルツハイマー病にならない理由をヒトとチンパンジーの神経のiPS細胞を比較することで探っていると話しているのを聞いて、基盤コース前期の「科学的手法に基づくアルツハイマーの新しい予防戦略」という講演を思い出した。同じアルツハイマー病になる仕組みを解明するための研究でも、原因物質を化学的に分析する手法やかかりにくい霊長類とヒトの違いを調べる手法など色々な方法で行われていることが分かった。 同じ学問名であっても様々な研究手法があることや同じ目標に向けて様々な分野からのアプローチができることを知り、研究の自由さを感じ自分の考えに柔軟性を持たせたいと思った。
  • iPS細胞はとても有名でよく聞く話題であり、教科書でも取り上げられているにもかかわらず、再生医療以外の、希少動物の保存や、脳のニューロンを作ることによる進化の研究などといった利用方法があることを、今回初めて知った。ヒトと他の霊長類を比較して研究する際、人体の被験や胚などが倫理的課題となるが、細胞という小規模なもので研究をすることで解決される。特にこの利点は、倫理的課題が技術的・短期的な解決が難しいだけに画期的だと感じた。 また、3通りのiPS細胞の染色手法を体験し、未分化の細胞の分布を調べた。ニホンザルのiPS細胞では、皮膚の繊維芽細胞とともに培養したものはそうでないものに比べ、未分化が維持されているという結果だった。このように未分化を保つ手法はヒトやマウスといったメジャーな動物では確立されているが、マイナーな動物ではまだまだだそうだ。 今回は、一つの基礎研究があると非常に多くの応用研究があるのだと感じた。まるで多能性細胞のようである。
  • 昆虫と人間とでは体温が違うため、細胞を培養するときには異なる温度の環境下で管理しなければならない。iPS細胞が医学の発展に貢献していることは知っていたが絶滅危惧種を救うことや人類を知ることにも繋がると知り、iPS細胞の発見は医学界だけではなく生物学界にも大きなしょうげきを与えていたことがわかった。今回、私はAP染色と免疫染色の二つの染色方法を体験した。免疫染色はコストがかかる分どこにiPS細胞を生きたまま見つけることが出来るのに対して、AP染色は安く時間もかからないがiPS細胞を殺してしまうというデメリットがあるそうだ。従って、iPS細胞があるかどうかを確認するという初期段階にはAP染色を、あることが確認できたあとでもっと正確に知りたい時には免疫染色と使い分けている。
  • iPS細胞=医学的利用というイメージがあり、当初「霊長類学でiPS細胞を扱う」と聞いてその関連性が思い付きませんでした。新しいことを発見・開発するのが大切なのはもちろん、既にある技術を新しい分野に広げることが現代で求められている事なのだと感じました。

2017年11月4日

  • 実施場所

    霊長類研究所・大会議室及び第一放餌場

  • 当日の講師

    香田 啓貴 助教(認知科学研究部門 認知学習分野)

  • チューター

    豊田 有、黒木 結花

  • 実習の内容

    実習は、「ニホンザルやその他のサルの顔写真に基づいて、異種であるヒトがどの程度、オトナとコドモと見分けられるのか」、という年齢判断について、見本合わせ課題を作成しデータを取る、という実験を実技した。
    そのための実習内容としては、
    1. 識別をしながら放餌場で写真撮影する。
    2. その写真を刺激として加工する
    3. 事前に教員が準備した見本合わせ課題に、刺激を読み込ませ、自分自身を被験者としてデータを取る。

    写真の加工や整理作業に失敗した学生もいたために、一部実験は十分な検証ができずに失敗してしまったが、なぜ失敗したかの検討を皆で進める中で、写真の加工と整理作業に間違いがあったことも突き止めることができ、研究や実験におけるデータの考え方と問題点の洗い出し、という基礎的な作業ができた。結果的には良い鍛錬になった。実習の最後には、学生の協力と作業の成果として、年齢認知を実施するための実験道具が構築できたので、今後様々なことに応用が可能なものになるという将来性について説明し、終了した。

  • 霊長類学_実習風景写真撮影と観察の様子
  • 霊長類学_実習風景講義の風景
  • 霊長類学_実習風景実際の写真加工の風景

活動を通して学んだこと

  • 猿の観察では、個体の大きさにより、年齢を見分けることができたが、顔だけでは判別は難しいということが、実験からわかった。だか、縦横の並べ方の違いや、猿の種類によっても見分け方の正答率も違ってくると思うので、それについて、もっと調べて見たいと思った。また、個人差が大きく見られたので、それの違いについても知りたいと思った。
  •  今回の活動から「研究」とはどのようなものであるかを学びました。今日の実験の仮説は先生が用意して下さり、それに従って私たちが実験を行う為の道具を先生の補助の下作成し、実際に実験をしました。初めてニホンザルを双眼鏡を使ってアップで見て写真を撮ったのですが、しぐさがとても可愛く癒されました。ニホンザルの写真を撮った後は、パソコンに取り込んで実験に使う為のサルの顔の画像を編集しました。この時にサルの分類を間違えてしまい、後の実験に支障が出てしまいました。少しのミスで研究結果が大きく変わってしまったので研究をするときは細心の注意を払わねばならないことが分かりました。研究というのは日々の地道な作業の積み重ねであるから、根気よくする必要があるのです。今日行った実験は、人間がどのくらいの割合で大人のサルと子供のサルを区別できるかというものでした。実験の後に先生から今日のテーマである言語とは一見関係なさそうな実験と言語との関連性について聞きました。私たち人間は言葉があるから大人ザルと子供ザルを区別するなどの実験の内容をすぐに理解できるがサルは言葉がないため簡単なルールでも習得するのに時間がかかるそうです。普段何気なく使っている言葉が急に重みをもった大切なものに思えてきました。また、今回の実験を通してプログラミングなどのこれまであまり触れたことのなかった分野の勉強も自分の専門分野の研究をするときに使う可能性があるので、してみようと思うようになりました。
  • 今回最も印象的だったのは、言語とは思考能力そのものである、ということである。ニホンザルは、タッチパネルの青く表示される部分を押せば正解だということを言葉ではなく経験で習得するしかなく、また記憶する際にも言語は必要なため、非常に難しい。考えてみれば私たち人間も、幼いころの記憶や感覚などを思い出してみると、随分今と異なっているだろう。それももしかすると言語活動が活発になり、様々なものに名前をつけて理解をすることができるようになったからなのかもしれないと思った。また実習では、研究には専門分野の知識だけではない様々な知識や技術が不可欠だと、改めて痛感した。今回の場合で例をあげると、実験装置を作るためのプログラミングやカメラの技術である。同じように、霊長類学の研究であっても数学や物理が重要だと伺った。自分もそろそろ高校で物理か生物を選択する時期なので、参考にしたい。今回、今まで自分が知らなかった分野を垣間見ることができ新たな疑問がわいてきたと同時に、実際に活躍する研究者の方々の熱意を感じられたことは、大きな収穫である。特に霊長研には、理系ではない言語学を研究していらっしゃる方、海外で一年の大半をサルの観察に費やしていらっしゃる方など幅広く、独創的でかつ熱心で圧倒される。自分もそのような研究者になりたいという単純な憧れと、このような機会の貴重さを改めて感じた。
  • サルと人間は遺伝子的にはすごく近いのに思考の仕方や持ってるであろう概念などが違ってとても興味深いと思った。
  • ニホンザルは日本の気候の場合、夏に1番食べ物が多くなるため、1年で春にしか妊娠、出産しないと決まっていることを知りました。そのため、私が今回実習で見た時のニホンザルは盛りの時期でした。霊長類学というと、このような生物学の中にあるというイメージが強かったのですが、話を聞いていると人間と人間に近い動物を比較してさらに人間のことを知ることができる学問だということが分かりました。また、一概に研究といっても研究するための道具を作るのがとても難しいことだと実際に体験させていただいてわかりました。
  • 「霊長類はヒトと近い存在であり、だからこそ類人猿を通じてヒトを学ぶ事ができる」というのが、前回の前期C群での感想でした。しかし今回の実習中に「サルとヒトの見えている世界が全く違う」という話を聞き、今まで見知ったつもりになっていた霊長類学の世界が、より複雑に感じられるようになりました。分かった気分になったり、性急な判断をしたりすることで、本来の姿を見失う事があるという事を今回学びました。

平成29年度 実施レポート

年度別の実施レポート