京都大学ELCAS(エルキャス)

実施レポート

[基盤コース前期]A群 2016年10月15日

タンパク質の形から生命現象を理解する

杤尾 豪人 教授

タンパク質の形から生命現象を理解する細胞は様々な外界の刺激に応答します。例えば、体内に病原体が侵入してくると、これを察知して攻撃し、排除してしまう免疫応答などです。このような細胞レベルの現象も、細かく細かく見ていくと、最終的には、分子の働きに行き着きます。生体は特別な役割を持った沢山の分子(多くの場合はタンパク質)を持っていて、それらが細胞の中や表面で、結合したり、離れたり、時には化学反応を起したりすることで、細胞の様々な応答が引き起こされます。本講義では、免疫や炎症に関係するタンパク質の構造を見ながら、その働きを紹介します。

系外惑星発見による宇宙観・生命観の大変革

佐々木 貴教 助教

1995 年以来、2000 個を超える太陽系外の惑星が発見され、この数年では地球型惑星の発見も相次いで報告されています。これらは地球のように海をたたえて生命を育む惑星が宇宙に充満する可能性、さらには、そのことにより生命の存在も相対化される可能性を示しています。自然科学の次の大きな課題の一つは、宇宙における生命進化の一般性・多様性の探求であり、それを実現する惑星の探求です。本講演では、系外惑星の理論や観測に関する簡単なレビューを行うとともに、系外惑星の発見によっていかに人類の宇宙観・生命観が大きく変化し始めているのかを、最新の話題を交えながら熱く語ります!

分子レベルでみた光合成の仕組み

竹田 一旗 准教授

「光合成」とは、生物が日光を利用して二酸化炭素からデンプンなどの有機物を作る作用のことです。シアノバクテリアや紅色細菌など、植物以外にも光合成をおこなう生物がいます。光合成では、集光や電荷分離、電子伝達、ATP 合成、炭酸固定などに関わるさまざまな種類のタンパク質が協力し合っています。これらのタンパク質の多くは、すでに分子構造が詳細に解明されています。講義では、タンパク質構造の決定方法や、最新の成果、未解明の問題を紹介しながら、分子レベルで光合成の仕組みを解説していきます。

[基盤コース前期]A群 2016年10月1日

生物と温度について

梅田 真郷 教授

私たちは、日頃から今日は暑いなあ、寒いなあ、と言っていますが、生物の長い歴史を考えると、生物種の存亡を左右する最も大きな要因の一つが温度です。一方、私たちの体は、炭素や水素、酸素などの限られた原子の組み合わせによって作り出されるタンパク質や脂質などの分子から出来ています。このような分子の働きや集合状態を規定するのも温度です。今回の講義では、地球温暖化による生物種の大量絶滅、生物の温度適応や温度センサー、動物の体温調節など、生物と温度の関わりについて分子から環境までの様々な視点から考えてみようと思います。

宇宙はブラックホールがいっぱい -X線天文衛星による宇宙観測

鶴 剛 教授

光もガスも何でも飲み込んでしまう天体「ブラックホール」は、1971 年に白鳥座から初めて見つかりました。その後の研究から、ブラックホールには色々な種類があることがわかってきました。質量も太陽の10 倍程度のものから、驚くべきことに10 億倍に達するものも存在します。ブラックホールは吸い込むだけではありません。X 線や高エネルギー粒子を放出し、銀河進化に大きな影響を与えます。つまり活動する宇宙の重要なプレイヤーです。講演ではブラックホール研究の世界、そしてそれを支えるX 線天文衛星を紹介します。

植物の光合成を実現する光と分子の関わりの原理とそれを調べる光物理化学

熊崎 茂一 准教授

光エネルギーを利用して無機化合物から生命活動に必須な有機化合物を作り出せる光合成は地上の生物圏維持に必須であり、地球環境の維持、食料生産、人工的エネルギー生産のためにも学ぶべきことが多い。光合成を実現する仕組みは複雑ではあるが、反応の素過程は物理や化学の原理で実現している。分子レベルや細胞レベルでの光合成の仕組み、光合成生物の仕組みを解き明かすためにも光を用いた物理的、化学的測定法が役に立つ。光と分子の関わり方を記述する科学の基礎、光合成反応を調べる測定科学の基礎について解説を行う。

[基盤コース前期]B群 2016年10月15日

情報の理論

河原 達也 教授

情報とは何か?情報とデータはどう違うのか?情報の量はどのように計測するのか?本講演ではこのような素朴な疑問に答えるとともに、様々な情報を符号化する方法について述べます。その上で、私たちが日常使っている言葉の情報を計算機でモデル化する方法について解説し、それが音声認識や機械翻訳などの実現において重要な役割を果していることを説明します。ディジタルな情報が、確率的な理論に基づいていることを理解して頂ければと思います。

算術幾何平均のアルゴリズム -高校数学から計算数学へ-

中村 佳正 教授

相加(算術)平均と相乗(幾何)平均の不等式【数学Ⅱ】と、数列とその極限【数学B、数学Ⅲ】から、約200 年前にガウスが見つけた「算術幾何平均のアルゴリズム」が定義されます。このアルゴリズムは、振り子の周期を表す楕円積分を計算する上で、コンピュータ時代でも計算精度と計算時間の両面でなお最強の計算アルゴリズムであるだけでなく、楕円関数論という数学の花形分野に結びつきました。この講義では、基本的な論理を積み上げていくうちに思いがけない高みに立ち、あらたな応用を獲得することができる数学の面白さを体験していきます。

薬と受容体の化学

加藤 博章 教授

薬が効くとはどういうことなのか、化学の言葉で考えてみましょう。
細胞膜にはいろいろな情報を伝達する化学物質の標的としてタンパク質で作られた受容体と呼ばれる分子があります。そして、その受容体にホルモンのような特定の化学物質すなわち分子が作用します。すると、受容体に何らかの変化が生じて細胞に対して信号が伝わり、生理学的な変化が引き起こされます。例えば、アドレナリンというホルモンは、アドレナリン受容体に作用して、心臓の心拍数を上昇させたり、血管収縮を引き起こしたり、気管支の拡張を促したりすることが知られています。そして、アドレナリンの作用を真似できる分子やその作用を遮断する分子が作られ、薬として用いられています。
では、それらの分子にどんな特徴があれば、アドレナリンと似た作用を示したり、反対にその作用を邪魔したりできる薬となるのでしょうか。そもそも、どうしてアドレナリンは、その受容体に作用することができるのでしょうか。もっとさかのぼって、アドレナリンが受容体に作用するとは、それぞれの分子と分子の間にどんなことが起きていることなのでしょうか。これら薬と受容体の作用メカニズムのなぞに化学で迫っていきましょう。

[基盤コース前期]B群 2016年10月1日

学習する人工知能のつくりかた

鹿島 久嗣 教授

人工知能はコンピュータ上で知能の実現を目指す情報学の一分野であり、近年、将棋・囲碁などのゲームで人間のプレイヤを上回る強さを発揮したり、自動運転や医療診断などさまざまな分野で躍進するなど、大きな話題になっています。その中核となっているのが機械学習とよばれる経験(データ)をもとに、コンピュータプログラムが「自ら賢くなる」ことを実現する技術です。この講義は機械学習の基本的な考え方と、これがどのように実現されているかというその裏側の仕組みについて紹介します。

岩石から地球内部を読み解く

河上 哲生 准教授

地質学は、地層や岩石中に残された記録を読み取り、地球の成り立ちを明らかにする学問です。小惑星から試料を持ち帰ることができる現代にあっても、人類が掘削できたのは地殻の深さ約12km までです。地下深部の様子を知るには、現在地表に露出している「過去に地下深部で形成
された岩石」中の記録を読み取り、高温高圧実験やモデル計算などと組合せて推定することになります。本講義では、ヒマラヤのような大陸衝突帯の深部や、日本列島直下のような沈み込み帯深部で起きている現象を、岩石からどのように推定しているのかを紹介します。

有機反応の機構を考える

松原 誠二郎 教授

自然科学の基本は、観察であると言われますが、それだけではありません。観察した事を人に正確に伝えることも同じぐらい重要です。この伝え方を学ぶことが科学の勉強の重要な側面です。有機化学において反応を記述するやり方は、構造式と電子の流れを示す矢印を使用します。これができると、暗記を命じられていた有機反応が格段と解り易くなります。有機化学が暗記の学問でなく式を用いた記述で表現する論理的なものであることを学びましょう。

[基盤コース前期]C群 2016年10月15日

藻類の多様性と地球環境

宮下 英明 教授

酸素を発生する光合成を行う生物の中からコケ植物、シダ植物、および種子植物を除いた残りのすべての生物を「藻類」と呼んでいます。藻類は、ミラクルな進化を遂げ、想像を遙かに超えた多様性をもつ生物の集まりです。地球史においては酸素を含んだ大気の形成を担った生物であるとともに、現在でも地球環境および地球生態系の維持に重要な役割を果たしています。本講義では、光合成の誕生から藻類の進化・多様化、地球生態系の維持における藻類の重要性、藻類を利用したバイオ燃料生産の現状と課題などについて紹介します。

社会基盤の構築と数学・物理のつながり

木村 亮 教授

人々の生活基盤となる様々な社会資本の整備においては、環境中における橋梁やトンネル構造物の挙動、水、地盤、人や交通の流れといった現象を、その根底にある原理を把握して、数学や物理的な知識を総動員して適切に「モデル化」することが必要となります。この講演では、私たちの身近にある社会資本の整備において、高校で学習する数学や物理の知識を用いて高度な「モデル化」がどのように行われているかを具体例に挙げて紹介します。

菌類学入門

田中 千尋 教授

菌類は、かび、酵母、きのこを包含する生物群で、陸上生態系において、植物( =生産者)、動物(=消費者)の生産物・消費物を系内でリサイクルする分解者として進化してきたと考えられている。しかし、菌類はこの進化の過程で植物と特に深い関係をもち、植物の分解者としてだけでなく、寄生者あるいは共生者として主要なものとなっており、農業生産に多大な影響を与えている。本講義では、これら菌類について、あまり知られていないヒトとの関わりを中心に概説するとともに、最新の菌類学の話題を基礎ならびに応用生物学の両側面から紹介する。

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平成28年度 実施レポート

年度別の実施レポート